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闇打つ心臓
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伝説的な自主映画としての『闇打つ心臓』。23年経てつくられた『闇打つ心臓Heart,beating in the dark』。闇打つ心臓とは何なのか?関係者や監督たちに聞いて回る、リレーインタビュー。

by yamiutsu
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長崎監督×諏訪監督×矢崎監督トークショー!
番外編第3弾は、『闇打つ心臓』の長崎監督、そして長崎監督とは20年以上もの付き合いのある諏訪敦彦監督と矢崎仁司監督をお招きしてのトークイベントです!司会は、『闇打つ心臓Heart, beating in the dark』のプロデューサーの佐々木史朗さんです。
昔からお互いの作品作りに大きく影響し合ってきた監督たちの、興味深い出会いから、現場に対する意識など、映画に対する熱い思いが詰まったイベントになりました。



長崎監督×諏訪監督×矢崎監督トークショー!_f0087322_17164028.jpg佐々木:夜遅い時間にたくさんの人に来ていただいてとても感謝しています。昔から知ってる3人なんで司会進行を受けたんですが、実は僕もこの映画に出ているんです(笑)。3人とも僕とは24〜5年前からの付き合いなんです。さっきみんなで話していたんだけど、長崎の映画は、タイトルの付け方がとてもかっこいい。『闇打つ心臓』というタイトルも普通なかなか思い付かないよね。諏訪はタイトルをつけた瞬間を知っているというけど、どんな感じだった?
諏訪:『闇打つ心臓』は、なんの前触れもなく「タイトルができた」と事務所に長崎さんが入って来て、「ちょっと恥ずかしいけど」と言いながら黒板に小さく「闇打つ心臓」と書いたんです。すごいタイトルだなあと思いましたね。インパクトのあるタイトルでした。名前が付けられる瞬間て何かが動く気がしますよ。

佐々木:急にイメージが動きはじめるというか、膨らみ始める瞬間だよね。矢崎は、長崎とはどういうきっかけで知り合ったの?
矢崎:大学が一緒だったんです。ちょうど日大の芸術学部に入って、授業で映画の歴史しか教えていなくて、つまらなくてとてもイライラしているときに内藤(剛志)たちに出会ったんです。それで、内藤がすごい監督がいるぞって長崎さんを紹介してくれたんです。

佐々木:諏訪は日芸じゃないのに、どうしてまた長崎と知り合ったの?
諏訪:僕は東京造形大学だったんだけど、当時はほとんど大学に行ってなくて、山本政志監督の助監督をしていました。山本さんは長崎さんのファンで、山本さんと飲んでるときに、「長崎がダビングやってるから手伝い行くぞ」と自転車かっぱらって横浜まで行ったりしましたね。そのあと、「足を引っ張るなよ」といって山本さんに送り出されたのが、長崎さんの『九月の冗談クラブバンド』の現場だったんです。

佐々木:長崎から見て、諏訪とか矢崎はどういうふうに見えてたの?
長崎:言いにくいんですが、かなりコキ使ってましたね(笑)。矢崎さんは『九月の冗談クラブバンド』の前まで、助監督とかをやってもらってたんです。それ以降何本か撮った映画には、諏訪が付き合ってくれたという関係です。やっぱり助監督っていうのは技術的なことを要求されるけど、この2人はそういう要素もありつつ、むしろ映画をどうするかということを一生懸命考えていたという印象がありますね。

佐々木:僕自身も30年近く映画を作っているけど、最近助監督についてやや不満な点があるとすればそれなんだよね。つまり、職能として動くことはみんなうまくなっているんだけど、映画の中身について意見を言ったり、場合によっては、反論したりということがない気がする。矢崎から見て今の助監督はどう思う?
矢崎:制作部みたいな感じがしますね。昔は演出部と制作部が喧嘩をしたりするようなことがあったと聞きますけど、今は、仕事を“消化する”という感じ。ものを生み出すエネルギーがほとんど消耗していますよね。

佐々木:諏訪はどう?一番最近はフランスで撮ってるけど。
諏訪:スタッフはとてもよかったですよ。現場にゴダールについていた撮影監督のキャロリーヌ・シャンプチエさんがいたんです。彼女が、「ゴダールは、スタッフがディスカッションすることによって映画に命が吹き込まれるんだと言っていた」と教えてくれました。日本の助監督は、監督が意見を聞くと、「それは監督のものですから」というふうに謙遜することが時々ありますが、それは日本でしか通用しないですよ。ものを作る態度ではなくなってますよね。そういう人ばっかりじゃないし、僕はいいスタッフと組んできたと思うんですが。『九月の冗談クラブバンド』では、僕は一番下っ端の助監督でカチンコ打って、何もできないのに一生懸命やってたんですけど、でも、監督に意見を言ったりして生意気な奴でした(笑)。

長崎監督×諏訪監督×矢崎監督トークショー!_f0087322_17161016.jpg佐々木:長崎は、自主映画や初めての35ミリ作品の『九月の冗談クラブバンド』で、助監督だけではなくて、スタッフの意見とかはどういう風に聞いていたの?
長崎:最近は考え方がだんだん変わってきたとは思うんです。一方で、今諏訪が言ったように、スタッフの意見をすごく自分なりに大事に思ってもいるんです。と同時に、内容だけじゃなくてスケジュールや予算の意見のこともすごく大事にしますね。逆に言うと、予算とかスケジュールが内容に関わっているとも思うんです。自分がもしスケジュールに関して「こうしてほしい」と言えたら、その瞬間にそれも演出じゃないかなと、そう思えうようになってきましたね。
諏訪:8ミリ版の『闇打つ心臓』のときは、すごくディスカッションをする空間だったと思うんです。スタッフやキャストの人たちがよく話し合ってましたね。

佐々木:8ミリ版の『闇打つ心臓』は、長崎がひとつのイメージを持っていて、それを作ろうとみんなに伝えながら作ったというよりも、作品に参加しているすべてのスタッフ、キャストも含めてある集団があの映画を作っていたっていう感じがするよね。ぼくはその集団からくる風圧に圧倒されて、それが面白くて、いつかあの映画で何か出来ないかなって考えていて、今回この作品を作ったんですよね。
長崎:映画ってのは、監督がフューチャーされがちだけど、少なくとも自分は、現場も面白いし、現場はしんどいことがほとんどなんだけど、ディスカッションの場をもてないとつまらないし、映画も面白くならないと思っています。

佐々木:一本のシナリオでも、100人いれば100通りの読み方がある。こちらのイメージしていたものと、実際の現場の演出やカメラワークや役者の動きなんかが、ずれていく。でも、どんどんそのずれが膨らんだりして、瞬間的に怖いところもあるんだけど、同時にそれがすごく面白くなってくる。そんな経験を一度してしまうと映画を作ることから抜けきれないんだよね。矢崎は、そういう映画の持つ集団性については苛立ったりする?
矢崎:ほとんどスタッフは邪魔してるとしか思えないですね(笑)。でも、結局、自分は、会話の中から何か生まれるということを信じています。邪魔してるということを認識して邪魔するのが大事なんですよ。『風たちの午後』のときに現場に長崎さんが来て、「矢崎さん、シナリオ通りに撮ってるだろ。シナリオを壊さなきゃだめだよ」って言ったんですよ。それをいつも肝に銘じてます。
諏訪:昨年『un couple parfait』という映画を撮りました。僕は相変わらず、撮影では脚本を作らなかったんです。でも、そうすると、みんな自分で色々考えてくるんですよ。それが面白くて、その状態を長く持続させたいので、脚本を書かないでいます。何が起きるか分からないし、それぞれが考えて来るから創造力が出てくるんですよね。そういう意味ではそのやり方でスタッフの創造力を引き出していけたと思います。
長崎:映画とはいろんな作り方があって、皆それぞれが自分の中に、こういうのが映画だっていうものを持っているかもしれない。けど、そういうものからずれることも映画なんじゃないかと思うし、そんなことを気になってくれたら嬉しいし、作った甲斐があったなと思います。

映画作りの裏側や監督の個人的な意見まで、色々聞くことができ、短い時間でしたが、とても充実したイベントでした。本日ゲストで来て頂いた諏訪敦彦監督の最新作は『Un couple parfait』、そして、矢崎仁司監督の最新作は『ストロベリーショートケイクス』。こちらも楽しみですね!
次回、番外編第4弾は、音楽を担当した大友良英さんをお招きしての、監督とのトーク&大友さんのミニライブが行われたイベントの様子をアップします。乞う御期待!!

by yamiutsu | 2006-05-02 17:21 | 番外編