闇打つ心臓
yamiutsu.exblog.jp

伝説的な自主映画としての『闇打つ心臓』。23年経てつくられた『闇打つ心臓Heart,beating in the dark』。闇打つ心臓とは何なのか?関係者や監督たちに聞いて回る、リレーインタビュー。
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
<   2006年 05月 ( 2 )   > この月の画像一覧
長崎監督×大友良英ミニライブ&トークショー!
番外編第4弾は、長崎監督と、音楽を担当した大友良英さんをお招きしての、トーク&ミニライブ!大友さんの音楽に対する実験的な姿勢と、長崎監督の映画に対するこだわりが重なりあって、興味深い音楽作りのお話を聞くことができました。


f0087322_2158310.jpg司会:今日は、お越し頂きありがとうございます。では、監督と大友さんから一言ずつお願いします。
長崎:今日は本当に有難うございます。大友さんとは、初めて一緒にお仕事をさせてもらったんですけれども、映画に音楽をつけるということにとらわれない、刺激的でとても楽しい作業ができたんですね。出来上がった音楽をこれから聴いてもらいますが、とても素晴らしいものになっています。皆さん楽しんで行って下さい。
大友:今日はお越しいただき有難うございます。上映の前に、映画に入っている音楽をモチーフにした即興演奏を行います。今回、長崎監督との初めての仕事で、どういうことを考えているのかな、と手探りの状態で作業をしました。僕個人としてはすごく画期的な仕事ができたと思っています。

司会:監督は、『闇打つ心臓』の音楽を大友さんにどういうふうにお願いしたんですか?
長崎:えーっとですね。記憶がないんですよね(笑)。
大友:僕もあんまり覚えていないですよ(笑)。
長崎:少し話がずれてしまうかもしれないけど、オリジナルの8ミリ版の映像も、今回の本編の中に出てくるんですよ。オリジナル版を現在のものに入れるという編集で、非常に悩んでいた時期があったんです。その時期のものを大友さんに渡していて、どうかな、むずかしいだろうなという気持ちで大友さんにお会いしたら、大友さんはすごく興奮してくれて、オリジナルの映像と新しく作った映像とがカットバックしていくのをとても気に入って、面白がってくれたんです。オリジナル版の映像はもっと音を汚したほうがいいとか、色んなアドバイスをくれたんですね。その大友さんの意見が今回の出来上がりにはかなり影響を与えています。
大友:今思い出した!オフィス・シロウズで話した時ですよね。最初は、完成されていない段階のものをもらっていて、正直どうなるのかな、なんて思いながら見たんです。映画って、大体同じ時期に撮った映像を過去や現在、未来と見えるように編集していくじゃないですか。なのに、今回はテクスチャーが82年の8ミリフィルムと、現在のデジタルビデオとでバラバラで、それがすごく面白くて。確かその時に、昔の音をきれいにしたいっていう話も出て、それはやめたほうがいいって言ったんですよ。汚いままのほうがいいって。
長崎:いや、大友さんは「もっと汚したほうがいい」って言ってましたよ。
大友:ひどいねえ(笑)デジタルのほうは、デジタルのままのほうがいいって言ったんですよね。音楽では、アナログとデジタルを両方おいて、その差を見せるっていうのは案外普通にやっていることなんです。でも、映画じゃほとんどやっていなくてこれは面白いぞ、と。興奮したのはそこですね。

司会:ありがとうございます。それでは、いよいよ大友さんの即興演奏にうつりましょうか!

f0087322_2159367.jpg−おもむろにギターを抱え、大友さんの即興が始まりました。
皆さんにこの演奏をお届けすることはできませんが、ぜひ、『闇打つ心臓Heart beating in the dark』を見て、心臓に響く重いドラムとギターの音を感じてみてください!

司会:監督は、できあがった『闇打つ心臓』の音楽を聴いてどんな感想をもたれましたか?
長崎:僕は、僕の映画に音楽をつけるというのはすごく難しいと思っているんです。映画の中の音楽というと、普通“メロディ”で映画を思い出したりするじゃないですか。でも、大友さんとの作業では、少し違うあり方が見えてきたんですよね。音の塊というか、音が映画自体を動かしていたんですよ。あ、こういうことがあるんだったらいいなってすごく思えたんです。もうひとつ記憶に残っているのは、映画の中で、主人公たちが自分の過去を一人で喋るところがあって、大友さんにそこに音楽をつけてほしいとお願いしたんです。そこにはかなりスローなテンポのドラムと大友さんのギターが入ってるんですけど、大友さんは、これは一種のラップみたいなものだから、編集のリズムを考えて、音を足したり消したり自由にしていいよと言ってくれたんです。そうした時に、セリフを含めて、全部の音が音楽みたいに聞こえた瞬間があって、ちょっと得難い体験をしたんですよ。すごく刺激的でした。

司会:大友さんは、どういうふうに思いながら作られたんでしょうか。
大友:今回は、ドラムが通常じゃありえないほどのゆっくりした、bpmでいうと40というテンポで、要するに“隙間”が山のようにあるんです。ラップは、通常、今回の4倍くらいの早さのものなんですけど、結局素材はまったく一緒なんですよね。ビートと声。映画のリズム感というのが必ずあって、音楽のリズム感があって、その両方がシンクロする、ずれるというその中で何か見えてくるものがあったらいいなと意図して作りました。メロディとかではなくて音色、フィルムでいえば色合いとか、テクスチャーだけで押せないかなっていうのは、作ってて思いましたね。だから、なるべくシンプルで単調なものがいいなと思って作りました。

司会 映画音楽に関しては、まだまだいろいろな可能性があるように思いますが、『闇打つ心臓』は、大友さんと長崎監督のそのひとつの成果だという気がしますね。

今回は、『闇打つ心臓Heart beating in the dark』の“音”を軸にした素敵な話が伺えました。ゆっくりとしたドラムと、登場人物たちの声、その重なりを全体的に音として感じるということ。初日舞台挨拶での水島かおりさんの「ライブ感覚で映画を体験してほしい」という言葉が甦りました。もう一度、『闇打つ心臓Heart beating in the dark』を見て、音という視点から作品を感じたいですね!!劇場窓口他にて、大友さんの音楽を全8曲収録したサントラCD付きのパンフレット(1300円)も限定販売しています。ぜひお家に帰ってからも『闇打つ心臓Heart beating in the dark』をお楽しみ下さい。
[PR]
by yamiutsu | 2006-05-08 22:03 | 番外編
長崎監督×諏訪監督×矢崎監督トークショー!
番外編第3弾は、『闇打つ心臓』の長崎監督、そして長崎監督とは20年以上もの付き合いのある諏訪敦彦監督と矢崎仁司監督をお招きしてのトークイベントです!司会は、『闇打つ心臓Heart, beating in the dark』のプロデューサーの佐々木史朗さんです。
昔からお互いの作品作りに大きく影響し合ってきた監督たちの、興味深い出会いから、現場に対する意識など、映画に対する熱い思いが詰まったイベントになりました。



f0087322_17164028.jpg佐々木:夜遅い時間にたくさんの人に来ていただいてとても感謝しています。昔から知ってる3人なんで司会進行を受けたんですが、実は僕もこの映画に出ているんです(笑)。3人とも僕とは24〜5年前からの付き合いなんです。さっきみんなで話していたんだけど、長崎の映画は、タイトルの付け方がとてもかっこいい。『闇打つ心臓』というタイトルも普通なかなか思い付かないよね。諏訪はタイトルをつけた瞬間を知っているというけど、どんな感じだった?
諏訪:『闇打つ心臓』は、なんの前触れもなく「タイトルができた」と事務所に長崎さんが入って来て、「ちょっと恥ずかしいけど」と言いながら黒板に小さく「闇打つ心臓」と書いたんです。すごいタイトルだなあと思いましたね。インパクトのあるタイトルでした。名前が付けられる瞬間て何かが動く気がしますよ。

佐々木:急にイメージが動きはじめるというか、膨らみ始める瞬間だよね。矢崎は、長崎とはどういうきっかけで知り合ったの?
矢崎:大学が一緒だったんです。ちょうど日大の芸術学部に入って、授業で映画の歴史しか教えていなくて、つまらなくてとてもイライラしているときに内藤(剛志)たちに出会ったんです。それで、内藤がすごい監督がいるぞって長崎さんを紹介してくれたんです。

佐々木:諏訪は日芸じゃないのに、どうしてまた長崎と知り合ったの?
諏訪:僕は東京造形大学だったんだけど、当時はほとんど大学に行ってなくて、山本政志監督の助監督をしていました。山本さんは長崎さんのファンで、山本さんと飲んでるときに、「長崎がダビングやってるから手伝い行くぞ」と自転車かっぱらって横浜まで行ったりしましたね。そのあと、「足を引っ張るなよ」といって山本さんに送り出されたのが、長崎さんの『九月の冗談クラブバンド』の現場だったんです。

佐々木:長崎から見て、諏訪とか矢崎はどういうふうに見えてたの?
長崎:言いにくいんですが、かなりコキ使ってましたね(笑)。矢崎さんは『九月の冗談クラブバンド』の前まで、助監督とかをやってもらってたんです。それ以降何本か撮った映画には、諏訪が付き合ってくれたという関係です。やっぱり助監督っていうのは技術的なことを要求されるけど、この2人はそういう要素もありつつ、むしろ映画をどうするかということを一生懸命考えていたという印象がありますね。

佐々木:僕自身も30年近く映画を作っているけど、最近助監督についてやや不満な点があるとすればそれなんだよね。つまり、職能として動くことはみんなうまくなっているんだけど、映画の中身について意見を言ったり、場合によっては、反論したりということがない気がする。矢崎から見て今の助監督はどう思う?
矢崎:制作部みたいな感じがしますね。昔は演出部と制作部が喧嘩をしたりするようなことがあったと聞きますけど、今は、仕事を“消化する”という感じ。ものを生み出すエネルギーがほとんど消耗していますよね。

佐々木:諏訪はどう?一番最近はフランスで撮ってるけど。
諏訪:スタッフはとてもよかったですよ。現場にゴダールについていた撮影監督のキャロリーヌ・シャンプチエさんがいたんです。彼女が、「ゴダールは、スタッフがディスカッションすることによって映画に命が吹き込まれるんだと言っていた」と教えてくれました。日本の助監督は、監督が意見を聞くと、「それは監督のものですから」というふうに謙遜することが時々ありますが、それは日本でしか通用しないですよ。ものを作る態度ではなくなってますよね。そういう人ばっかりじゃないし、僕はいいスタッフと組んできたと思うんですが。『九月の冗談クラブバンド』では、僕は一番下っ端の助監督でカチンコ打って、何もできないのに一生懸命やってたんですけど、でも、監督に意見を言ったりして生意気な奴でした(笑)。

f0087322_17161016.jpg佐々木:長崎は、自主映画や初めての35ミリ作品の『九月の冗談クラブバンド』で、助監督だけではなくて、スタッフの意見とかはどういう風に聞いていたの?
長崎:最近は考え方がだんだん変わってきたとは思うんです。一方で、今諏訪が言ったように、スタッフの意見をすごく自分なりに大事に思ってもいるんです。と同時に、内容だけじゃなくてスケジュールや予算の意見のこともすごく大事にしますね。逆に言うと、予算とかスケジュールが内容に関わっているとも思うんです。自分がもしスケジュールに関して「こうしてほしい」と言えたら、その瞬間にそれも演出じゃないかなと、そう思えうようになってきましたね。
諏訪:8ミリ版の『闇打つ心臓』のときは、すごくディスカッションをする空間だったと思うんです。スタッフやキャストの人たちがよく話し合ってましたね。

佐々木:8ミリ版の『闇打つ心臓』は、長崎がひとつのイメージを持っていて、それを作ろうとみんなに伝えながら作ったというよりも、作品に参加しているすべてのスタッフ、キャストも含めてある集団があの映画を作っていたっていう感じがするよね。ぼくはその集団からくる風圧に圧倒されて、それが面白くて、いつかあの映画で何か出来ないかなって考えていて、今回この作品を作ったんですよね。
長崎:映画ってのは、監督がフューチャーされがちだけど、少なくとも自分は、現場も面白いし、現場はしんどいことがほとんどなんだけど、ディスカッションの場をもてないとつまらないし、映画も面白くならないと思っています。

佐々木:一本のシナリオでも、100人いれば100通りの読み方がある。こちらのイメージしていたものと、実際の現場の演出やカメラワークや役者の動きなんかが、ずれていく。でも、どんどんそのずれが膨らんだりして、瞬間的に怖いところもあるんだけど、同時にそれがすごく面白くなってくる。そんな経験を一度してしまうと映画を作ることから抜けきれないんだよね。矢崎は、そういう映画の持つ集団性については苛立ったりする?
矢崎:ほとんどスタッフは邪魔してるとしか思えないですね(笑)。でも、結局、自分は、会話の中から何か生まれるということを信じています。邪魔してるということを認識して邪魔するのが大事なんですよ。『風たちの午後』のときに現場に長崎さんが来て、「矢崎さん、シナリオ通りに撮ってるだろ。シナリオを壊さなきゃだめだよ」って言ったんですよ。それをいつも肝に銘じてます。
諏訪:昨年『un couple parfait』という映画を撮りました。僕は相変わらず、撮影では脚本を作らなかったんです。でも、そうすると、みんな自分で色々考えてくるんですよ。それが面白くて、その状態を長く持続させたいので、脚本を書かないでいます。何が起きるか分からないし、それぞれが考えて来るから創造力が出てくるんですよね。そういう意味ではそのやり方でスタッフの創造力を引き出していけたと思います。
長崎:映画とはいろんな作り方があって、皆それぞれが自分の中に、こういうのが映画だっていうものを持っているかもしれない。けど、そういうものからずれることも映画なんじゃないかと思うし、そんなことを気になってくれたら嬉しいし、作った甲斐があったなと思います。

映画作りの裏側や監督の個人的な意見まで、色々聞くことができ、短い時間でしたが、とても充実したイベントでした。本日ゲストで来て頂いた諏訪敦彦監督の最新作は『Un couple parfait』、そして、矢崎仁司監督の最新作は『ストロベリーショートケイクス』。こちらも楽しみですね!
次回、番外編第4弾は、音楽を担当した大友良英さんをお招きしての、監督とのトーク&大友さんのミニライブが行われたイベントの様子をアップします。乞う御期待!!

[PR]
by yamiutsu | 2006-05-02 17:21 | 番外編